COSMIC

 

――ねえ、キミ。もしかしてエイリアン?

 秋の終わりを感じる寒空の公園で独りベンチに座ってぼーっと夜空を見ていたとき、そんな質問が聞こえた。すっかり日は沈み暗くなってるが遊びに夢中でまだ帰ってない子供がいたんだろう。妙な問いかけだと思いはしたが、まさか自分に声をかけられてるなんて思いもせず俺は夜空を見続けた。
 すると、また同じ質問が耳に届く。……まさか、俺に対して言ってんのか? 思えば、声も近くから聞こえてるような気がする。目線を夜空から誰もいなくなった淋しい公園に移し、声の主を探すように辺りを見回した。

「ねえ、もしかして宇宙船探してるの?」

 声がすぐ傍、隣から聞こえた。ハッとして見れば俺が腰掛けるベンチの横、空いてるスペースに同じように腰をかけている少年がいた。小学生くらいだろうか、蛍光色のウインドブレーカーを羽織ったヤンチャそうな顔の少年がこっちを見ていた。――らんらんと瞳を輝かせて。

「探してねえよ」

 いつからそこに居たんだよとか、何を言ってるんだとか、お前そもそも何なんだとか、言いたいことは山ほどあったがそれらを飲み込んで俺は愛想のない顔で素気なく答えてやった。すると少年は眉を八の字にし、瞳には思いきり落胆の文字が浮かび上がるような翳りを見せ残念そうに顔を歪めた。

「やっと会えたかと思ったのに」

「何に」

 しまった。少年の言いたいことも考えてることが俺の理解を超えすぎていて、つい尋ねてしまった。そして問いかけたことをすぐに後悔した。少年の答えは自分の知識や経験からは太刀打ちできない意味不明な答えだったからだ。

「エイリアンに」

 俺はどうしたらいいのか分からず反応できず固まった。少なくとも少年の言動は納得や理解の範囲を超えていて良好なコミュニケーションを築くのは難しいようだ。まあ小学生なんて誰も彼もそんなもんだ。生産性のある会話なんて期待する方が間違えている。さて、どう声をかけるべきか。言葉を探していると少年が呟いた。

「探しているんだ、僕。前にここで会った男の人を」

 少年は、初恋の人を思い出し懐かしむような目で人気がなくなった公園を見つめている。どことなく淋しさを感じる横顔にまたも俺は思いがけず質問してしまった。

「なんで探してるんだ?」

 問えば「困っていたようだったから」と少年は答えた。
 なんでも少年が会った男は、地球に不時着した〝エイリアン〟で、着陸時の事故の際に〝宇宙船〟から放り出されてしまい、墜落しただろうそれを探している中で少年に会ったのだという。そして”宇宙船”が見つからず困っていたのだとか。
 いやいや少年。そんなバカげた話を信じるのか。おい、嘘だろ少年。

「次の日も探したんだ。その次の日も、さらに次の日も。でも全然見つからなくて」

 そりゃそうだ。そんなもの見つかっていたら今じゃこの公園は宇宙船が発見された公園としてオトナたちの手で崇め奉られていたことだろうさ。
 最初は驚き、戸惑った少年の受け答えにも慣れてきた俺は飽きを紛らわすためにポケットをまさぐりタバコを取り出して咥えた。

「そいつは大変だったな」

 思ってもない言葉を吸い込んだ煙と共に吐き出す。むしろ大変なのは妙なガキに出会った俺の方だ。適当に相槌を打って頃合いを見計らって離れよう。今すぐ突っぱねたいが、ちょっと横柄に接して保護者が出てこられてもそれはそれで面倒だ。しゃべり続ける少年の話を受け流しつつ、俺は今日の晩御飯について考えを巡らせた。
 まさかこれが少年と俺の運命の出会いになるなんて。
 この時は全く予想だにしなかった。

 

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