cigarette

 

「タバコをやめろだなんて酷なこと言うよ」と彼。「この味知ったらそんなこと言えるわけがない」そう言いながらフィルターに口づけて、吸い込む。
 チリチリと焦がす音が心地いいだなんて思えるのは彼に惚れたせいだ。自分はタバコなんて好きじゃない。むしろこの世から消え失せてしまえばいいと強く願っている。彼が吐き出された煙が苦くて喉や胸、呼吸器のあらゆる場所が締め付けられるような感覚が不快で思わず顔をしかめた。そんな自分を見て彼がニヤニヤ笑っている。そして、じっとこちらの唇を見つめる。――キスを求めている目だ。
 その熱の灯る色っぽい瞳に促されるかのように自ら瞼を閉じ顔を近づけた。唇に感じる柔らかい感触と同時に、ちゅっと軽い音がする。そして訪れる苦みと息苦しさ。
だから、タバコは嫌なんだ。……まるで彼と自分の恋を表すかのような味だから。

 

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